導入事例 財団法人 黎明郷 弘前脳卒中センター様
〒036-8104
青森県弘前市大字扇町1-2-1
TEL 0172-28-8220
FAX 0172-28-7780
http://www.reimeikyou.jp/hsc/
情報共有ツールとしてIT化を進めチーム医療や患者説明に有効活用
質の高い脳卒中医療に取り組むためのシステム構築
財団法人黎明郷は2005年7月、青森県弘前市に弘前脳卒中センターを開設しました。同センターは、青森県初の脳卒中医療に特化した医療機関として、病床数145床の規模を持ち、急性期から回復期までの医療を展開。24時間の受け入れ態勢を整え、超急性期にはt-PAを用いた血栓溶解療法を行い、さらに、早期リハビリテーションなどにも取り組んでいます。同センターでは、開院とともに電子カルテシステム「HOPE/EGMAIN-NX」を稼働させ、チーム医療の実践やインフォームド・コンセントに有効活用しています。
[ 2007年1月19日掲載 ]
施設概要
- 設立: 2005年7月
- 病床数: 145床
- 診療科目: 内科、脳神経外科、リハビリテーション科、整形外科
導入の背景
5つのキーワードに基づいた質の高い医療を実践
弘前脳卒中センターは、「質の高い医療・リハビリテーションを実践し、地域社会の保健・医療・福祉に貢献します」という理念を掲げ、脳卒中医療に取り組んでいます。脳卒中医療に特化した病院であり、24時間の受け入れ態勢や、早期治療、早期リハビリテーションのための環境整備など、特色ある病院づくりを進めています。開院に当たり、同センターがめざした病院像について、福田道隆理事長は次のようにコンセプトを述べています。
「私たちが手がける医療は、5つのキーワードに基づいています。その1つは、患者さんにとって良い環境であること。アメニティの追求です。そして、2番目が地域のほかの医療機関と連携した24時間の受け入れ態勢です。3番目としては、t-PAを用いた超急性期医療の提供があります。また、4つ目のキーワードは、リハビリテーションなどにおけるチーム医療の実践です。最後のキーワードは、これらを実現していくための情報共有ツールとしての電子カルテシステム導入です」
同センターのある津軽医療圏での脳卒中による救急搬送は、年間およそ800人です。福田理事長は、そのうちの400~500人を同センターで治療することを目標に掲げています。そのために、24時間対応のホットラインを設け、脳梗塞に対する3時間以内のt-PAによる血栓溶解療法などを行っています。救急搬送時の対応については、連絡時に電子カルテシステムの患者IDを付したり、あるいはあらかじめ救急用に用意したIDを使うなどの工夫をマニュアル化し、迅速な処置ができるよう配慮しています。
また、FIT(full-time integrated treatment)プログラムに則った早期リハビリテーションにも取り組み、ADL(日常生活動作)改善に効果を上げています。「ベッドサイドの早期リハビリテーションでは、スタッフ間の情報共有が重要です。その点で電子カルテシステムは強力なツールです」と福田理事長は述べています。
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福田 道隆理事長 |
今田 慶行院長 |
和島 早苗看護部長 |
スタッフの情報共有ツールとして電子カルテシステムを導入
急性期病棟のスタッフステーションにある記録室。フィルムレス化している弘前脳卒中センターでは、電子カルテシステムのモニタと高精細モニタを並べて設置し、医師が読影、診断しています。
弘前脳卒中センターでは、開設計画当初からPACSを導入し、院内をフィルムレス環境にすることにしていました。CT、MRI、アンギオシス
テム、エコーなど多くのモダリティが稼働する環境において、フィルム管理の手間を省き、フィルム代などのコストを削減することが、PACS導入の大きな目的でした。ところが、センターの基幹システムをオーダリングシステムにするか、電子カルテシステムにするかは、センター開設の10か月前になっても、正式には決定していませんでした。
最終的に電子カルテシステム導入に踏み切った最大の理由について、今田院長は、「オーダリングシステムでは、スタッフ同士の情報の共有化ができないと考えました。実際に稼働してから、チームによるベッドサイドでの早期リハビリテーションなどで、電子カルテシステムによる情報共有がうまくいっており、この判断は正しかったと思います」と述べています。
こうして、富士通の中堅病院向けの電子カルテシステム、HOPE/EGMAIN-NXの導入が決定しました。「中小ベンダーのシステムが稼働していた他院でのトラブルを実際に目の当たりにしたこともあって、大手ベンダーであることの信頼性を評価しました」と、今田院長は選定の理由を説明しています。
HOPE/EGMAIN-NXの導入が決定してからは、稼働に向けての準備作業が始まりました。スタッフが最も労力を費やしたのは、運用規定づくりでした。新たに集まってきたスタッフの中で、オーダリングシステムの使用経験のあるスタッフはほとんどおらず、また新規開設ということもあり、システムに関する以外のことも含めて、初めから築き上げていかなくてはなりませんでした。このような状況で、作業を進めていくのは大変なことですが、福田理事長は、「操作練習などにおいても、経験のないことがかえってモチベーションを維持し続けることに役立ったのではないでしょうか」と述べています。
一方で、HOPE/EGMAIN-NX自体が新しいシステムであったことや、ベンダーの持っているシステム構築のノウハウが総合病院向けのもので、脳卒中医療を専門とする同センターにそのままを用いることができないといった課題もありました。そのため、運用規定づくりは、原案作成の段階から難航しました。リハビリテーション評価のための動画や、心身機能の評価をどのように電子カルテシステムと連携させるかなど、ベンダー側と議論しながら、内容を固めていきました。
また、運用規定については、実際に稼働してからも改善点が出てきています。和島早苗看護部長は、入力の権限について見直しをする必要があると指摘しています。「現状では、外泊許可や給食についての入力まで、権限をすべて医師に限っています。そのため医師の業務に負担がかかり過ぎています。例えば、回復期病棟でのルーチンの看護なら、最初のオーダだけ医師が入力すれば、以後は看護師が維持していき、変更があるときだけ改めて医師が入力するような方法を考える必要があります」と説明しています。
導入の効果
スタッフ同士だけでなく患者さんとの情報共有も実現
理学療法室・作業療法室。電子カルテシステムの内容は、理学療法室・作業療法室でも確認でき、チーム医療に役立っています。
医療の場で情報システムを使用するのが初めてというスタッフが多かったこともあり、2005年7月の開設当初は、トラブルも発生しましたが、その多くはスタッフの操作ミスによるものでした。スタッフが操作に慣れるに従い、トラブルは減少していきました。また、現在、問題が発生した際には、システムを設定変更するか、スタッフの運用を工夫していくかなどの対応を検討することで、より使いやすいシステムになるよう取り組んでいます。
電子カルテシステムに対するスタッフの反応については、「稼働時にトラブルが発生したこともあり、不満はかなり強かったです」と和島看護部長は述べています。しかし、以前の勤務先で電子カルテシステムを使用した経験を持つ和島看護部長は、「トラブルは必ず起こるもので、時間が過ぎていくうちに、電子カルテシステムは欠かせないものとなっていく」と言い続けてきたそうです。この言葉どおり、稼働から3か月が過ぎたころからトラブルが減少して安定した運用ができるようになり、半年が経過した現在では、「紙カルテにはもう戻れない」と感想を話すスタッフが数多くいます。
スタッフが感じている電子カルテシステム導入のメリットは、チーム医療を行う上での情報共有のほかにも、待ち時間の減少とインフォームド・コンセントの充実が挙げられます。特に、検査画像などを示しながら、診療情報を時系列で見せられるので、患者さんにとってわかりやすく、説得力のある説明ができると評価されています。
今後はデータを蓄積して、データベースを構築し、病院としてのEBMを導き出すことと、標準的な経過を見せながら治療計画や予後の予測について患者さんに説明できるような仕組みをつくりたいと、今田院長は考えています。
一方で、想定していなかった業務負担も発生しています。例えば超急性期での治療において、従来なら口頭ですませていた注射のオーダを、端末から入力しなければならないといったことが挙げられます。しかし、オーダ入力は、聞き違いや転記ミスなどによる医療過誤を防ぐことになり、その点についてはスタッフも評価しています。また、看護師が端末入力に集中し過ぎているとの指摘が患者さんからあり、この点についても、患者サービスが十分提供できるようにしたいと和島看護部長は指摘しています。
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回復期病棟のスタッフステーション(左)。スタッフステーションでは、医師と看護師が並んで端末に向かうことで、コミュニケーションを図り、情報を共有できるようにしています(右)。 |
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将来の展望
地域医療連携への活用をめざしシステムをさらに強化
弘前脳卒中センターでは、病床数の有効利用のため、入院期間を上限である5か月より短く設定しており、退院後の患者に対する地域との連携がきわめて大事です。現在、紹介状や紹介先の医療機関に提供する画像は、紙やフィルムに出力していますが、これは紹介先の医療機関がデジタルデータに対応できなかったり、セキュリティ対策のためです。同センターにとって、地域医療連携へのITの活用は、これからの課題となっています。
しかし、ITによる地域医療連携パスの確立については、将来展望として福田理事長、今田院長の視野に入っています。今後は、まずグループ内の黎明郷リハビリテーション病院と介護老人保健施設つがるとの間で電子カルテシステムを生かしたデータ連携を始め、それを地域の他施設へと広げていくことをめざしています。
情報共有を目的に電子カルテシステムを導入した同センターにとって、スタッフや患者さんとの情報共有だけでなく、地域の医療機関との情報共有を進め、シームレスなケア体制を築いていくことは、重要なテーマです。同センターがそれを実現したとき、地域住民に大きな安心感をもたらすことになるに違いありません。
(弘前脳卒中センターでのHOPE/EGMAINNXの導入については、株式会社シグマソリューションズ様のご協力をいただきました)
[図を拡大する]
弘前脳卒中センターのHOPE/EGMAIN-NXシステム構成図
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