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注) 株式会社リクルート「キーマンズネット」に2009年3月12日に掲載された記事より転載

経営環境が変動する時代に求められる、可視化を超えた情報活用

富士通、SAPジャパンのEMIソリューションが目指す、戦略的な情報活用の実現

市場や景気の変化が激しい昨今、競争に勝ち抜くには経営環境の変化に迅速に対応することが求められる。そのためにも戦略的な情報活用が求められ、ERPなどで管理されている企業の“経営資源”ともいうべき膨大なデータ活用が不可欠とされる。

富士通とSAPジャパンは、この膨大なデータを分析、経営に役立つ情報として可視化するためのEIM(注1)分野での協業強化を昨年、2008年 11月に発表。この激動の時代に求められるEIMソリューションについて、富士通 ERP事業本部 本部長代理の東 純一氏と、SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスユーザー&プラットフォーム本部長の福田譲氏に話を伺った。

注1 Enterprise Information Management


市場の変化と今日の課題

富士通、SAPともERPに長く携わっていますが、どのように市場が変化してきたか、それぞれの観点をお聞かせ下さい。

富士通 東氏(以下、東氏):まず、2000年頃、製造業を中心に第1次"ERPブーム"と呼ぶべきものがありました。その頃は、全社的に導入するというよりも、部門や一部分の導入という傾向がありましたね。そしてここ数年は第2次ブームといった状態です。製造業では大手から中堅まで導入範囲が広がっています。昨今の傾向としては、流通や小売業など幅広いユーザーが導入を検討しているという状況です。その背景にはやはり、内部統制への取り組みなど、周辺環境の変化が大きな要因にもなっているのだと思います。

SAPジャパン 福田氏(以下、福田氏):確かに内部統制や業務の標準化は相変わらず大きなテーマですね。SAPの場合、2000年頃は9割くらいがERPの売上でした。それが最近ではERPが約4割、残りの約6割がCRMやビジネスインテリジェンス(BI)、プラットフォーム製品などです。企業の投資が、基幹システムに向かうというより、もう少しビジネスに近いフロント部分にシフトしていると考えています。

なるほど。市場の変化に伴い、プロダクトも変わってきているということですね。では、そこにはどのような課題があるのでしょうか。

東氏:欧米と違い日本の場合「現場の声や意向を汲み、現場の努力でうまくやる」という部分があります。それは強みでもありますが、完全に全社的に型にはめるERPを導入しきれない部分でもあります。一方、経営者側としては、全社の情報をERP的な視点で見たいというニーズもあります。この辺のギャップをどう解消するかが課題の1つとなるわけですね。

福田氏:そこに今回の、富士通とSAP両者の取り組みの意義があるのではないでしょうか。データもフロントエンドも、ビジネスプロセスも全部一体化されたERPが必ずしもベストとは限らないという見地から、仮想統合したいというニーズに合わせてEIMという形をとる。情報の可視化という点では、ERPと同様の効果を上げようというわけですね。


“小さく”システム構築する意義

富士通 ERP事業本部 本部長代理 東 純一氏

この時代、EIMのようなしくみを小さく上手に導入し、変化に柔軟に対応することが求められている。(東氏)

東氏:このご時世、大がかりなシステム構築をするにしても非常に難しい部分があります。例えばある企業が、全社的にシステムを構築していたとしても、その企業が事業をやめてしまったり、合併などしてしまったりということも起きます。では、構築途中の情報を統合するにはどうすればよいか…そのようなケースですよね。ですから、世の中の変化のスピードに合わせるには、小さく上手に導入して、EIMのような基盤をしっかり作り、変化に対応できるようにする体制が今、求められているのだと思います。

福田氏:小さく導入してすばやく結果を出すという意味では、このような事例があります。とある海外の企業が、北米に11の工場を持つ製鉄所を買収したそうです。その際に、11工場間での調達を可視化するために、マスターデータを集中管理するしくみとBIを、わずか1年未満で導入しました。
つまり、「まず現状を可視化する」というIT投資を短期間に行ったわけです。これを仮にERPで行ったとすると、確かに業務プロセスの可視化はより完全に近いものになるでしょう。しかし、そのためには3年程の年月と莫大なコストがかかってしまうのです。
この場合、経営者的な視点から「いかにコストを下げるか」と考えると、マスターデータ管理とBIの導入が適切だったということになります。これは、今の日本にも通じるものですよね。


散在した経営情報の統合・統一を行うためにも、戦術を持ったIT投資が必要だということでしょうか。

福田氏:そうですね。いかにROI(注2)が高いIT投資を行うかということですね。日本の企業では、コストは削りたいが、誰がどこで使っているか実はよく分からないとか、拠点ごとに把握はできても、全社横断的には分からないなど、複雑な問題もあります。特に今回、EIMで見たときに役立てる部分なのではないでしょうか。

注2 Return On Investment:投資利益率

東氏:BIはそれ自体がコストを削減したり、効率化に影響したりするものではありませんが、上手に使えば効果があるものです。しかし、使い方により効果に差があるというのは、ユーザーにとっては難しく感じる部分かもしれません。

福田氏:そういう意味では、例えば技術が進歩してBIはいかにユーザーに“使いこなさせるか”、という動的な表現力が求められるようになっています。そのあたりをうまく、今回のEIMソリューションに組み合わせ、単なる可視化にとどまらない製品にしていきたいですね。「この業界のこの業種の人は、こういうタイミングで判断し、次の購買につながる」というような具体性を持ったサービスにまで発展できる可能性があると思っています。

SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスユーザー&プラットフォーム 本部長 福田 譲氏

まず現状を可視化するというIT投資を短期的に行う。小さく導入し、効果を上げるというのは従来のERPとは大きな違い。(福田氏)


<解説>EIMソリューションとは

EIMソリューションとは、企業の膨大なデータを分析し可視化する、戦略的情報活用の実現を支援するソリューション。

富士通とSAP、協業による強化のポイント

  • 利用者層別フロントソリューションによる直感的な表現と操作性の良さで積極的な情報活用をサポート
  • 既存資産を有効活用しながら経営情報の一元化を実現するシステム構築
  • 業種別、業務別KPI設定、データ最新化などを支援する「EIM導入支援、運用支援サービス」の提供

EIMソリューションの可能性


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「経営層向けマネジメントダッシュボード」の画面。直感的な表現で状況変化の把握、原因分析、経営判断をサポートする (クリックすると拡大)

ビジネスオブジェクツ(BO)と統合したSAPと、富士通との協業で実現するEIMソリューションとはどのようなものでしょうか?

東氏:1つには現場での活用という視点があります。例えば、現場で使用する際には、見やすいものでないと大事な情報を見逃してしまうこともあるでしょう。ぱっと見たときに異常が見つけられる、というような“情報の表現力”を高める必要がある。今まで、データをためて分析できるところが強みだったSAP NetWeaver BWのBIと、分かりやすいユーザーインターフェースのBO。これがパチっと組み合わせられた製品が今回提供できるEIMソリューションです。

福田氏:日本の企業の強みは、営業員やエンジニア、店員など、このような人たちが前線でビジネスやサービスを支える現場の力だと思います。こうした人たちに直感的に分かる、トレーニングを受けなくても分かる…というような設計をSAPとしても重視しています。そういう意味でも、日本を代表する富士通との協業は良い結果をもたらすと思っています。

東氏:厳しい現在の環境にあって、会社は大きな戦略も必要ですが、現場がちゃんと判断、理解して動くことが大切です。ERPでデータを分析、結果を判断するスピード感だと、ややもすれば遅い場合もあるんです。まだまだ世の中も変わるでしょうし、基本的に色々なツールをベースに、すばやく導入できるしくみを提供することを考えていきたいです。その中でも、EIMソリューションは導入して終わりではなく、小さく入れた後にも大きく育てて、効果を出してもらうところまでサポートしていくという難しさはありますが、そこをきちんとやっていければと思います。



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「事業管理ダッシュボード」の画面。簡易シミュレーション機能を含む、操作性の良いダッシュボード。日々の事業分析・改善に効果を発揮。 (クリックすると拡大)

EIMソリューションに適した業種や業界などがあったら教えて下さい。

東氏:EIMソリューションは特定の業種や業界に特化したものではありませんが、今まで富士通は多くのSIに携わってきた実績があります。また、SAPもERPパッケージの提供で様々な業種や業界に取り組んできた経験がありますので、それぞれ良さを活かしつつ“スイートスポット”を押さえつつ、サービス提供してきたいと思います。今まで、業種や部門向けのBIがありましたが、それぞれの部門でほしい情報をデータウェアハウスに入れ始めると、データウェアハウスがあちこちに乱立する原因にもなり、全社的な取り組みとなるのは難しくなりますよね。EIMソリューションの場合にはまず、経営層が会社全体の売上や利益をどのように見るか、経営のためにほしい情報はどのようなものか…という点から、全社的に広げていくべきと考えています。
企業内には色々なシステムが散在し、簡単ではない部分がありますが、やりやすい部分から手をつけていくという取り組みになります。将来的には、ビジネスパートナーとか、グループ会社も含めて色々な情報を集めて判断するという場合もあると思います。そういう意味でも、従来のデータウェアハウスとは異なるものとしてEIMをとらえています。

福田氏:そうなると、EIMの中でもE=エンタープライズ…つまり広いエリアが大事で、事業部の壁を超えた可視化というようなことを意味するように思えます。興味深いですね。

東氏:将来的には、顧客との情報共有という案も出てくると思います。社外の情報も集めて、どのように先を読むか経営判断することが非常に重要なのです。ERPには入らないような情報も含めて集めるのが、EIMの目指す方向になるのでしょう。
まずは、先ほど申し上げた通り「手をつけられるところから」ということになりますが、当然、EIMソリューションの導入時にはヒアリングベースでアセスメントを行います。どこから改善すると投資効果が高いか、簡単に導入して結果が出せるかという点をご提案しています。やはり、小さな改善でもいいので“成功事例”を社内に作ることですね。それと、トップ層には自ら情報に触れてもらう環境づくりも有効です。富士通では、診断サービスやセミナーなど、様々な機会を設けていますので効果的に活用してほしいですね。

本日は興味深いお話をありがとうございました。


(転載記事ここまで)


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